あなたは最後まで観られるか!? 最悪の殺人ピエロが満面の笑顔で残酷に殺すゴアムービー「テリファー 終わらない惨劇」

 ハロウインの夜に起きた9人連続殺人事件。犯人の遺体が行方不明となって1年後、死んだはずの殺人ピエロ“アート・ザ・クラウン”が再び夜の街に現れ、前年よりもさらに残酷な血まみれのハロウィン・パーティを開始する……。2019年にDVD発売され容赦ない残酷さが物議を醸した「テリファー」の続編がついに公開。さすがにこれはやりすぎではないかとさえ感じる、キモく、むごく、グロいシーンが満載だ。「全米が吐いた!?」という宣伝コピーもけっして大げさではない。トラウマ必至の超残酷映画に、あなたは劇場でどこまで耐えられるだろうか。

本当に吐き気が……残酷殺人描写で退席者が続出!

白と黒のツートンのマスクと衣装に身を包み、黒いゴミ袋を背負ったピエロ、アート・ザ・クラウンのいでたちはいかにも安っぽい。仕事をなくした老俳優がやけっぱちで街頭宣伝のアルバイトをしているような貧しい姿だ。だが、大げさな作り笑顔で近づく彼を哀れに思い、お情けで声などかけた人間は最悪の拷問殺人のいけにえにされる。

言葉を発せず、コミカルなパントマイムを絶え間なく続けるサイレント・キラーは想像を絶する方法で人間の身体をズタズタに切り刻み、グロテスクに破壊する。狙われた女性は頭の皮を剥がれ、顔面をショットガンで撃ち抜かれ、美貌を台無しにされる。大量の血のりでモノトーンの衣装を赤く染め、人を切り裂くたびに嬉しそうに歯茎をむきだすアート・ザ・クラウン。直視できない場面の連続に、海外の上映では途中で席を立つ観客が後を絶たなかったという。

500万円映画からスタート。興収1500万ドルの成功へ

「バットマン」シリーズにおけるジョーカー、スティーヴン・キング原作「IT」におけるペニーワイズ。いわゆる殺人ピエロ、キラー・クラウンはホラー系作品の定番悪役として脈々と描かれてきた。それは大作ばかりではなく、B級ホラーにも数多く登場する。低予算映画に採用される理由は、クリーチャー造形にコストがかからないためだろう。そのぶんキャラクターの設定や演技力が映画の完成度を左右する。その面で低予算映画「テリファー 終わらない惨劇」は成功した。ハロウイン・シーズンに続々と公開された大作ホラーを打ち負かし興行戦争で下剋上。殺人鬼アート・ザ・クラウンは人気クリーチャーへとブレイクした。

日本でもDVDストレートだった前作「テリファー」(2016)はわずか35000ドル(約500万円)で製作。ホラー映画は世界流通するコンテンツだが、同作は劇場公開の機会が少なく、DVDやネット配信中心のリリースだった。しかし80年代スプラッター映画を思い出させる画面構成やリミッターをはずした残酷描写、そして何よりその“怖い人(テリファー)”感がトラウマになるアート・ザ・クラウンのキャラの成功でカルト・ホラーとして話題になり、続編のアナウンス後に実施された制作費のクラウドファンディングには予定の5倍、25万ドルもの寄付が集まった。2022年のハロウインに全米公開された「テリファー 終わらない惨劇」(原題『Terrifier2』)の最終的な興収は制作費の30倍以上、1500万ドルに及んだ。暴力的シーンのために成人向けにレイティングされたインディーズ・ホラーとしては異例のヒットである。

10年以上かけ研ぎ澄ませた殺人狂キャラクター、成功への道

最悪の殺人ピエロ、アート・ザ・クラウンは監督のダミアン・レオーネが10年以上にわたり手塩にかけたキャラクターだ。初めての登場は2008年、レオーネ監督の初監督短編「The 9th Circle」(11分)だった。その後、プロトタイプとなる短編版「Terrifier」(2011/28分)を完成させ、前作にあたる長編版「テリファー」で世界に発見される。そして2022年、本作でついにアート・ザ・クラウンは世界のスクリーンでスターになった。

その成功には、前作からアート・ザ・クラウンを演じたデイビット・ハワード・ソーントンの起用も大きかった。本格的にパントマイムを学んだ経験をもつソーントンは、お決まりのピエロ的しぐさと白いマスクからわずかにのぞく視線だけで、殺人狂にオリジナルな肉付けをした。耐えられない悪魔的キャラクターも、その成功を支えるのはあくまで演技の積み重ねなのだ。「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスや「13日の金曜日」のジェイソンなど、仮面の奥の表情を見せない悪役は恐ろしい。だがアート・ザ・クラウンはその逆だ。ピエロとして表情を誇張するほど、笑顔の意味は逆転し、残忍で不気味な気配が増幅される。おそらくソーントンは「エルム街の悪夢」シリーズでフレディを演じたロバート・イングランドのように、仮面の下の名優としてホラー映画史に名を残すだろう。禁じ手かもしれないが、「~終わらない惨劇」を最後まで観て、胸クソ感でもいいから何かが心に残ったら、ぜひ中の人、D・H・ソーントンのポートレートを検索してほしい。腰が抜けるほど普通の好男子の顔がそこにあるから。それが映画のマジックなのである。
 
最悪の残酷描写の中、スプラッター映画のお約束、ファイナル・ガール(最後に生き残る美女)シエナを演じるローレン・ラベラのファンタジー映画のようないでたちと勇敢さが、どうにか救いのあるエンディングにした。だが、はたして惨劇はこれで終わりなのか? 耐えられるなら、ぜひ最後の最後まで観続けてほしい。
 
本作は映画に純粋な感動を求める人にはあえて薦めないが、勇気を出して観ることであなたの内側の何かが変わるかもしれない。冒険を求める男女なら、あえてデート用にチョイスもアリだ。劇的に関係が進展する……かもしれないから。

文=藤木TDC 制作=キネマ旬報社

 

 


「テリファー 終わらない惨劇」

●2022年・日本・138分 R18+
●監督・脚本:ダミアン・レオーネ
●出演:ジェナ・カネル、ローレン・ラベラ、デイビット・ハワード・ソーントン、キャサリン・コーコラン、グリフィン・サントピエトロ 

●配給:プルーク、OSOREZONE 
●配給協力:シンカ
◎6月2日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開
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