ばらばらの痛みが出会う。性暴力被害者らサバイバーを捉えた「魂のきせき」
「阿賀に生きる」のカメラマンとして知られる小林茂が監督を務め、性暴力などさまざまな痛みを抱えたサバイバーたちを追ったドキュメンタリー「魂のきせき」が、10月24日(土)よりユーロスペースほか全国で順次公開される。ポスタービジュアル(グラフィックデザイナーの成瀬慧が担当)が到着した。

小林監督は性暴力のサバイバーである写真家との出会いをきっかけに、本作を撮ろうと決めた。友人が性虐待によるPTSDで苦しむ姿を見てきたからだ。やがてカメラは、他のサバイバーたちに向けられる。悔恨、怒り、うつ、不眠、解離、自傷、希死念慮などを抱えて生きることを、どう映すのか?
撮影が長期化する中で、監督は映画制作の意義を問う。そして自身と向き合い、満洲から引き揚げてきた家族との日々の記憶をたぐり寄せた。異なる時代と出来事に刻まれた傷は、響き合うだろうか。
「魂のきせき」というタイトルには2つの意味が込められている。傷つきながら歩んできた魂たちの《軌跡》と、それらが繋がり合う《奇跡》。その先に何があるのか──。
撮影は「鉱 ARAGANE」(2015)を発表したばかりだった小田香が担当。9年をかけて完成させた本作は、2025年の山形国際ドキュメンタリー映画祭と東京国際映画祭で上映され、反響を呼んだ。
〈コメント〉
小林茂(監督)
みずからの性被害を明らかにしてドキュメンタリー映画に登場するということを、どのように考えたら良いのだろうか。
3名のサバイバーと伴走してきた10年。彼らの「勇気」と「希望」にカメラを向ける日々は、彼らの苦しみが流れ込みながらも、いま思えば楽しい時間であった。
この鬱蒼とした暗闇の中でも、深海に生きる魚族のように、自らがもえて光を放つ彼らは美しかった。
その微かな光こそ映画の中で輝くだろう。
小田香(撮影)
撮影していると、その姿をうつしながら、お話を聞きながら、心を開いたり閉じたりする。ずっと開いたままだと溢れてしまうし、閉じたままだと声を聞くことができないから。
『魂のきせき』を撮影しているときも開閉しながら撮影していたが、閉じていても大きな感情がじぶんを貫いてくることがたびたびあった。
目の前の人が、今ここに生きていること。それにうたれた。涙が出た。共感や理解ではないと思う。みなさんがご自身の毎日を生きていること。その毎日は今日も続いてる。
にのみやさをり(出演者)
映画のスタッフの誰が欠けても、たぶん、この映画は出来上がらなかったと思います。ひとりひとりが今ここにいることや被害/加害について向き合い続け、考え続けた、今も考え続けている、その道程にこの映画は在る、そんな気がします。できるなら、簡単に答えを出して考え続けることを止めてしまうのではなく、この映画の先でもずっと、ずっとずっと、考え続けてほしい。誰もが被害/加害の当事者になり得る、あなたも、あなたも、君も、私も。だからこそ。
高橋和枝(出演者)
人生には、立ち止まり、自分がどこにいるのかさえ分からなくなる時があります。
そんな私が、一人で歩いていた道で映画と出会い、『魂のきせき』という旅が始まりました。
9年間、手探りで「奇跡」を信じ、一歩ずつ「軌跡」を積み重ね、その歩みの中で数えきれない「きせき」に出会ってきました。
振り返れば、そのすべてが誰かと共に歩んできた物語でした。
これからも、この物語の続きを、映画を通じて皆さんと共に紡いでいけたら幸いです。
森永都子(出演者)
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「魂のきせき」
出演:森永都子、高橋和枝、にのみやさをり、小林茂
監督:小林茂 撮影:小田香 録音:川上拓也 編集:秦岳志
歌:結華 制作事務局:須藤伸彦 プロデューサー:長倉徳生、秦岳志
製作:カサマフィルム
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
宣伝美術:成瀬慧 宣伝:高田理沙 配給協力:リガード 配給:アギィ
日本/2025/日本語/カラー/DCP/97分
©Kasama Film
公式サイト:aggie-films.jp/tnk
