名作「ヤンヤン 夏の想い出」は3人のアジア人監督のY2Kプロジェクトから生まれた――〈あの懐かしの映画を語ろう2〉第4回前編
キネマ旬報YouTubeチャンネル〈あの懐かしの 映画を語ろう2〉の第4回(全3回)の前編が8月7日(金)より配信が開始。フジ テレビなどでヒット作から単館系まで数多くの作品を手掛けた河井真也氏に今回語っていただいたのは「ヤンヤン 夏の想い出」(2000年)。

「牯嶺街少年殺人事件」(1991年)、「カップルズ」(1996年)など、台湾を代表する巨匠エドワード・ヤンの遺作となった「ヤンヤン 夏の想い出」が、公開から四半世紀を経て4Kレストア化され、昨年の12月から日本で再上映が開始された。2026年の8月時点でもまだ各地で上映は行われ、根強い人気を改めて証明すると共に、新たなファンを獲得している。
台北のマンションに暮らす、ある少年とその家族が経験するひと夏の出来事を描き、カンヌ国際映画祭監督賞受賞のほか、全米映画批評家協会賞、NY映画批評家協会賞など数多くの映画祭で絶賛された本作はどのような経緯で製作されたのか――日本と台湾の合作映画として製作を務め、4Kレストア化にも携わった、河井真也氏が語る本編動画の一部をご紹介する。
「スワロウテイル」のプロモーションのため台湾を訪れたことからすべては始まり、その時にエドワード・ヤンと初めて会ったという河井氏。その場で監督に『カンヌ国際映画祭のコンペで賞を獲れる作品を一緒にやりませんか』と持ち掛けたという。よくぬけぬけとそんなことを言えたと、河井氏は自身の発言を振り返るが、ともあれ、2回目に会った時には企画を提案するなど、より具体的に動き出していったという。
そして21世紀というニューミレニアムに移りゆく“時”をテーマに、エドワード・ヤン監督を含めた3人のアジア人監督がそれぞれ長編映画を製作する〈Y2Kプロジェクト〉として釜山映画祭で発表される。このプロジェクトには当初、岩井俊二とウォン・カーウァイが参加することが検討されていたが、シナリオを書かないウォン・カーウァイの起用は早々に断念する。製作費を集める立場の河井氏としては、シナリオのない作品にお金を出してもらうのは常識的にはかなり難しい話だったのだ。最終的にスタンリー・クワン監督が参加することになったプロジェクトは、アイデアマンであったというエドワード・ヤンの提案で、手遊びの“じゃんけん”から、グーはスタンリー・クワン、チョキはエドワード・ヤン、そしてパーを岩井俊二に、それぞれをモチーフにした作品を製作することになったという。
結果的に実現に至らなかったが、“チョキ”のエドワード・ヤンが最初に企画したのが「SCISSORS」(=はさみ)で、金城武を主演にした話だったそう。本編動画内でその時の企画書が映されるが、そのコンセプトをここに記載すると――
『SCISSORS』(はさみ)は、人間の競争本能や、人間が生き残りそしてライバルを叩きのめすために用いる最後のものさしが何であるかを、アクションや生きざまそして皮肉なユーモアなどを通じて、探求していくスタイリッシュなスリラーである。

本作が実際に製作されていればどんな作品になったのか興味は尽きないが、キャスティングの調整がつかなくお蔵入りになってしまう。そこで、河井氏の記憶では1カ月に満たない期間でエドワード・ヤンが書き上げたシナリオが、「ヤンヤン 夏の想い出」だったという――。
そのほか、岩井監督に国際的な評価と海外でヒットする作品を製作してもらうことが〈Y2Kプロジェクト〉の根底にあったことや、韓国人の監督にも参加してほしかったが当時の日韓関係により実現しなかったこと、「ヤンヤン 夏の想い出」には監督自身の経験が投影されていることなどが語られる。今回は全体の動画の前編が公開されたが、中編、後編と続いていくのでぜひご期待ください。
「ヤンヤン 夏の想い出」
監督・脚本:エドワード・ヤン
プロデューサー:河井真也
撮影:ヤン・ウェイハン
照明:リー・ロンユー
編集:チェン・ポーウェン
録音:ドゥ・ドゥーツ
美術・音楽:ペン・カイリー
出演:ウー・ニエンジェン、エレン・ジン、イッセー尾形、ジョナサン・チャン、ケリー・リー
2000年/台湾・日本合作/173分
配給:ポニーキャニオン
©1+2 Seisaku Iinkai
公式サイト:https://yi-yi.jp
