谷崎文学をウェイン・ワン監督×リリー・フランキー主演で映画化「Diary of a Mad Old Man」(原題)
谷崎潤一郎の小説『瘋癲老人日記』を、「スモーク」のウェイン・ワン監督がリリー・フランキー、ファン・ビンビン、斎藤工の共演で映画化した「Diary of a Mad Old Man」(原題)が、2027年夏にテアトル新宿ほか全国で公開される。場面写真が到着した。

舞台は現代の東京。脳卒中から回復しつつある69歳のウツギ(リリー・フランキー)は、介護をしてくれる義理の娘スースー(ファン・ビンビン)に執着し始める。身体の衰えとは裏腹に、性への欲望は増していった。二人の緊張を孕んだ関係は、やがて誘惑と妄想の境界を曖昧にしていく──。
作品は第39回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門で上映され、ウェイン・ワン監督、リリー・フランキー、斎藤工はトークセッションで次のように話している。
リリー「いろんな国際映画祭で上映して、大好評と大不評を味わっています(笑)。『全く受け付けない』という(映画祭の)ディレクターもたくさんいたし、『大好き!』という人もいるという、まさに俺と工くんが一番好きなタイプの映画です。みんなに好かれる映画を観に行ったことがないから。(観客に向けて)『澱は底に溜まる』と言いますから、みなさん、似たような人だと思っています!」
斎藤「リリーさん経由で、ウェイン・ワン監督が谷崎を映画化しようとしていると、遥か彼方の情報として聞いていたので、いち映画ファンとしてこの映画が完成してみなさんに観ていただけたことを幸せに思っています」
ワン監督「今度はこの2人を主演にコメディをつくったらいいかもしれませんね。私はすでに『スモーク』と『ブルー・イン・ザ・フェイス』を撮りましたから、今度は『Diary of a Mad Old Man』の続編を…」
リリー「そもそも、ウェインから『“老人の性”をテーマにした映画を撮りたい』と10年ぐらい前から聞いていて、プロットを書くのを相談されていたんですけど、『いろんなアメリカの俳優に断られているから、もう、お前でいい』って言われて、『え? 俺、出るんだ?』と思いました(笑)」
ワン監督「断ったのは彼ら(=ハリウッドの俳優)じゃなくて、私のほうです。みなさん、マーロン・ブランドが(日本を舞台にした映画)『八月十五夜の茶屋』に出ていたのを覚えていますか? やはり、この映画に白人の男性が出演するのは、非常に違和感があると思うんです」
リリー「紆余曲折あって、日本人と中国人(ファン・ビンビン)のキャストで、中国系アメリカ人のウェインが撮るアメリカ映画という、一番平和な成り立ちになりました。やはり『エロは世界をつなぐ』!」
リリー「例えば障害を持っている方とか、おじいさんとか、おばあさんというのは、性に対する意識というのがなくなっている人として、社会の中で振る舞わなければいけない側面があります。でもそれは、若い人たちや健常で生きている人たちのエゴであって。実際はそんなわけないじゃないですか。公園でボーっとしているおじいさんは、ママのケツを見ているわけですから」
リリー「これまでの日本映画でも“息子の嫁に手を出すジジイ”ってたくさん描かれてきたと思うんですが、そういう人ってすごくマッチョで、女性を弱いものとして扱っていて、気持ちの良くないシチュエーションばかりだった。それに対し、ウェインは(心が)少年だし、清潔な人だから、仕上がりがポップなんですよね。主人公ウツギの性欲も笑えてしまうし、俺はカナダでこの映画を観ましたが、みんな『腹がちぎれる!』みたいな感じで笑っていて、『俺はこんな笑われる映画をつくっていたんだ?』ということが意外だったんです。でも、最終的に“いとおかし”というような、悲しさもあり、純愛が描かれている。最高の“推し活映画”ですよね」
リリー「撮影の中盤、監督から『リリー、相談がある』と言われて。聞くと『この映画はこのまま撮影すると、ただの“良い映画”になってしまう』と悩んでいて、『それじゃダメなの?』と(笑)。その結果、優秀なスタッフのおかげで、3日後にはうなぎが(現場に)来ていました」
斎藤「リリーさんがおっしゃるように、額面どおりに台本に書かれていることに沿って、用意して現場に行くという作品ではないんだな、というのは、現場の雰囲気からしてありました。どう転んでも、そこに寄り添うという好奇心みたいなものにあふれている現場だったなと思います」
ワン監督「もちろん脚本というのは大切な映画の土台だと思います。ですけど、台本通りになってしまいますと、やっぱりつまらなくなってしまいます。特にお2人のような素晴らしい俳優さん、そしてビンビンさんのような素晴らしい女優さんと仕事をしている時はそうです。ですから、台本通りに撮ることもありますし、そうでない時には、やはりうなぎのシーンを撮るわけです」
リリー「カットされているシーンが多くて、(撮影に)手がかかるシーンほどカットされている。(説明的な部分を)バサバサと切れちゃう監督はすごい!」
ワン監督「それは私が本当に良いシーンに恵まれたからだと思います。かつて、私はフランシス・フォード・コッポラ監督のビルの中に、オフィスを構えていて、そこにポール・シュレーダー監督のオフィスもあり、その時に彼から教わったことなんですけど『編集に関して一番大切なことは、物語、そして主人公に関係のないものはカットすることだ』と言われました。『それで15分しか残っていなかったとしても、それでもいい。それが物語の真髄になるんだから、そこからまた広げていけばいい』と教わりました」
リリー「それでもうなぎは残ったんだね…」
リリー「彼女(=ファン・ビンビン)がいると、華やかで撮影時から“映画”にしてくれるんです。朗らかで明るくて、お芝居に対して真摯な方。僕が足を舐めるシーンがありますが、彼女、すごく丁寧な方で、直前までフランス人のペディキュアの技術者を呼んで、足のメンテナンスをしてくれていました」

「Diary of a Mad Old Man」(原題)
監督:ウェイン・ワン
出演:リリー・フランキー、ファン・ビンビン、斎藤工
2026/アメリカ
