タグ: 次世代への映画推薦委員会

90年代末の台湾の空気をさわやかに伝える青春ドラマ 「藍色夏恋」(02)や「あの頃、君を追いかけた」(11)など、瑞々しい青春映画を次々と生み出してきた台湾。90年代末を舞台にした「ひとつの机、ふたつの制服」も、そんな作品群に連なる一作だ。友情、恋、家族、受験といった普遍的なテーマを扱うこの作品がユニークなのは、同じ女子高の夜間部と全日制に通うふたりの生徒が、時間差で同じ机を使う「机友」として出会うこと。台湾の高校の夜間部も日本の定時制高校と同じく主に働く人たちのための学校だが、大学進学を目指す...
青年と祖母の交流から見えるもの、生まれるもの 大学を中退したエムは、ゲームの実況配信で稼ぐつもりだが成功には程遠い。ある日、祖母のメンジュにガンが見つかった。上手くやれば、遺産をもらえるかもしれない。エムは祖母の家に住み込み、世話をすることに――。 やや不謹慎な始まりから、青年が祖母と打算を越えた絆を育んでいくさまを描く「おばあちゃんと僕の約束」。タイの人気歌手および俳優であるプッティポン・アッサラッタナクンが演じるエムは、朗らかであっけらかんとしている。これが長篇映画デビュー作というウサー・セ...
青春の空を滑走した先で、痛みの重さを知る マリアのブログを通して、自然豊かなノルウェーの農場で可能な限り自給自足の生活を送るペイン家の生き方に魅了されたというシルエ・エヴェンスモ・ヤコブセン監督。作品としては完成しなかったものの、かつて一家にカメラを向けた経験を持つ。そんな彼女が10年ぶりにニックらと再会。大切な人を失った彼ら彼女らに寄り添いながら撮影を続け、今作を完成させた。 森の木を切り、畑を耕し、家畜を育て、家族で語り、笑い合っていたペイン家。その創造的で完璧な生活のバランスは、マリアの死...
青春の空を滑走した先で、痛みの重さを知る 理想とは程遠い大学生活を送る小西徹(萩原利久)。それでもバイト仲間のさっちゃん(伊東蒼)、ポジティブな友人の山根(黒崎煌代)と過ごす日々はそこそこ楽しい。そうした中、学食でひとり蕎麦をすする凜々しい桜田花(河合優実)と知り合い、急接近。それを感じ取ったさっちゃんは、意を決して小西に告白するが、その想いは実らず。やがて桜田は小西の前から姿を消す――あらすじに何気なく目を通し、大学生の青春と恋愛に、ちょっとミステリーを利かせたヤツだとわかった気になる。だがそ...
学校という社会の現実を少女の視点から描く 「ひとつの世界」という原題を持つこの映画は、小学校という〝社会〞に足を踏み入れたばかりの少女の視点から、その社会を規定する過酷なルールを生々しく見せる。周りと同じペースで行動することを要求される授業、友だちができなければ、ただ苦痛なばかりの休み時間や昼食の時間。とっくの昔に大人になってしまった人たちにとっても胸が苦しくなるほどおなじみの光景が、リアルに描かれている。本作で長篇デビューを果たしたローラ・ワンデル監督は、主人公ノラと観客を一体化させるため、終...
実話をもとに子どもたちに宿る可能性を見つめる物語 大人たちは生きるのに精一杯で子どもたちの教育について考える暇もないようなメキシコの街にあるホセ・ウルビナ・ロペス小学校。「型破りな教室」は、2011年にこの学校で起きた奇跡のような出来事について書かれた雑誌の記事をきっかけに作られた。 映画は、ドキュメンタリーを思わせる飾り気のないスケッチから始まる。家事をこなし弟妹に声をかけながら登校する少女、海辺の掘っ建て小屋で目を覚ます少年、ゴミの山で手鏡を見つける少女。彼と彼女たちが向かった学校は規則ばか...
社会のちっぽけな常識を、宇宙的視野で書き換える 自閉症と診断されたジェイソン少年。日常の細かいルールを決め、踏み外すと取り乱して手に負えなくなる。そんな息子に愛情を注ぎながらも振り回されるパパとママは大変だ。そうした中、応援するサッカークラブを実際に見て決めたいというジェイソンの希望から、パパと息子のドイツ全国スタジアム巡りが始まった。もちろん強豪バイエルンもドルトムントも探訪――パパの風貌は、両クラブに所属したフンメルス選手といったところだが(私見)、そういうレジェンドよりも、ジェイソンにとっ...
“あの日”を経験した者たちが向かうそれぞれの終着点 「あの日を忘れない」̶̶毎年3月11日になるとTVやインターネットで決まって流れるこの言葉。未曾有の災害が多くの人々を襲ったこの日を忘れてはいけない。確かにそうだ。しかし、この言葉を聞くたびに心を痛めている人もいる。解放されたいと願っている人もいる。 震災発生時、NYにいた宮城県出身の堀江貴監督。彼は、毎年訪れていた震災の追悼式で出会った、福島県の実家が移住を余儀なくされた女性の言葉に衝撃を受け、本作の製作を決意したという。「辛い思いをした日を決し...
大いなる存在を失った男が対峙する父という巨大な迷路 監督デビュー作「コンプリシティ/優しい共犯」(18)で東京フィルメックスの観客賞を受賞した近浦啓の長篇第2作。幼少期に自分と母を捨てた父の逮捕の報せを受け、久しぶりに父のもとを訪ねた息子が、秘められた彼の人生を辿っていく。俳優の道を歩む息子・卓を森山未來が好演。重度の認知症を患い別人のようになる父の陽二を藤竜也が圧倒的な存在感で演じ切り、第71回サン・セバスティアン国際映画祭で日本人初となるシルバー・シェル賞(最優秀男優賞)を獲得する快挙を達成...
必死でもがく女子高生たちの普遍的で生々しい心の叫び たとえスクールカースト一軍に属していようが、水泳部の部長だろうが、思春期真っ只中に身を置く女子高校生たちの心の奥底に堆積する不安や悩みは、決して尽きることがない。それはまるで、水のないプールの底一面に積もり、掃いても掃いても一向になくならない、グラウンドの砂の粒のようでもある。練習に打ち込む野球部員たちの掛け声と、蟬の鳴き声が響き渡る夏の青空の下、浮き彫りになるのは、第二次性徴を経た男女の性差に対する戸惑いや、「女は可愛くなければ認めてもらえな...

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