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この問題は「表現の自由」の侵害として裁判へ 真利子哲也監督の「宮本から君へ」はキネマ旬報ベスト・テンの3位に選出され、池松壮亮が主演男優賞を受賞するなど、2019年度を代表する秀作の一本である。文化庁所管の日本芸術文化振興会(芸文振)の審査を経て、1千万円の助成金交付が内定していた。 「負けてたまるか」は河村光庸プロデューサーのいまの心情だろう   ところが、出演者の一人、ピエール瀧が麻薬取締役法違反で3月に逮捕され、6月には有罪判決を受けた。芸文振は7月、瀧が出演しているという理由で...
必要なのは、表現に関わる側の自衛と、享受する側の「表現の自由」を支える自覚  2019年10〜11月に川崎市で開かれた『KAWASAKI しんゆり映画祭』が、ドキュメ ンタリー映画「主戦場」上映をめぐって迷走した。一連の経緯 は、『あいちトリエンナーレ』「宮本から君へ」の問題と時期が重 なったこともあり、表現の自由の危機として注目された。  1995年に始まったしんゆり映画祭は、NPO法人KAWASAKIアーツが主催、共催の川崎市が運営費のうち600万円を負担している。市民中心、行政が支えるとい...
一言「マニエリスム」と言ってしまえばよい。本作に寄せられた海外レヴューにある「逸脱」「横道にそれがち」「非線形さ」といった表現は、脱-中心化と脱-焦点化の〈原-身ぶり〉をもつマニエリスム芸術の特徴である。あるいは本作がタルコフスキー「ノスタルジア」(83年)、ヴェンダース「パリ、テキサス」(84年)、ホウ・シャオシェン「憂鬱な楽園」(96年)、アピチャッポン「世紀の光」(16年)など、数限りない映画の「引用の織物」(宮川淳)である点もマニエリスム的内省作用をなす。本作に幾度も現れるミラーボールは...
同時代、共有したいもの 都市の中、様々な上映会場へ足を向け、 軽やかに現代の映画を観て歩く詩人・映画監督、福間健二。 19年末の出会いのなかに2本の中国映画があった。そこから何が浮かび上がる? 映画「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」   去年の十月の、ポレポレ東中野での城定秀夫OV作品特集のことから。新作の『花咲く部屋、昼下がりの蕾』と『犯す女〜愚者の群れ〜』までの「エロVシネ」十本、どれも痛快だった。そうなったらつまらないというものを見事に逆転させる。撮影所時代の増村保造・...
完全無欠の時を、わかりあえる夢を 東京にやってきたビー・ガン監督 ビー・ガンを取材した日は曇りだった。アテネ・フランセで「凱里ブルース」を初めて観た日も同じような天気で、スクリーンに映る空もまた灰色をしていた。クリス・フジワラ氏がその日の観客にむけて「It's a good film for such a bad day.」と話した。絶好のインタビュー日和だ。 グランドハイアット東京の部屋に入ってまもなく、煙草を吸い終えた監督がやって来る。来日してからホテルに缶詰になって、ずっと取材を受けている...
写真=アンナ・カリーナ(『女と男のいる舗道』より)(c)1962.LES FILMS DE LA PLEIADE.Paris   2019年のフランスは、アンナ・カリーナの死と共に暮れた。折からのストライキの影響でパリはいつになく静かだったが、それはまるでパリの街自体が、ひっそりと喪に服しているようにも感じられた。急逝の翌日、文化大臣フランク・リステールは次のようなコメントを発表している。 「アンナ・カリーナの視線は永遠に、ヌーヴェル・ヴァーグを象徴するものです。特にゴダール、そしてリ...
「花札渡世」(67年)イラストレーション:岡田成生 1|「花札渡世」 (67年、監督・脚本:成澤昌茂) 関係者の尽力で近年劇場で鑑賞可能となり、この時初めて観て驚いた方も多数いたのではないか。私も数十年ぶりに再見し興奮を共有した観客の一人となった。本作は監督としては寡作な成澤昌茂の最高傑作であり、梅宮辰夫にとってもベスト作品。任俠映画全盛の折に作られたため、ある意味セオリー通りのストーリーなのだが、登場人物のキャラクターの多重性を描き込んだ脚本(成澤)と的確な画面構成さらに音にまで拘った演出は確...
現代中国映画の「深い理解への入口」へと読者をお誘いしてみたい。そして、いま始まろうとしている20年代の映画体験、20年代の世界を生きることに備えよう。このたび公開される、中国から届いたアートフィルムには驚くべき贅沢さ、大胆な構想、鋭敏な知性が躍っている。まずは素直な驚きに身を委ねてみよう。 中国映画が、とんでもない! 中国映画、2020年代を予想する 2020年は悲惨な幕開けとなった。新型コロナウイルスの影響で、映画館はどこも休館、映画の撮影はすべて中止となった。03年のSARSのときにもあった...
成澤昌茂監督・脚本「花札渡世」(67年)は梅宮本人も「代表作」と語る名篇 ©東映 1967 ある夏の日の梅宮さんと坪内さん 梅宮辰夫、坪内祐三 追悼 伊藤彰彦 どうしようもなく厄介で人間臭い先輩――坪内祐三   梅宮辰夫のことを書こうとすると、坪内祐三のことが思い浮かぶ。二人が立て続けに亡くなったからではない。坪内が監督では内藤誠、俳優では梅宮辰夫を敬愛していたこともあるけれど(『新潮45』18年2月号で坪内は梅宮にインタビューした)、わたしがはじめて二人に会ったのが同じ夏の日だったからだ。 2...
「地域映画」は、本当に地域のためになるのか? 連載その5 池田エライザ(女優、映画監督)インタビュー 地域の「食」や「高校生」とコラボした美味しい青春映画製作プロジェクト『ぼくらのレシピ図鑑』シリーズ第2弾「夏、至るころ」が完成した。監督は池田エライザ。撮影は福岡県田川市で行われた。 本連載では、これまで『ぼくらのレシピ図鑑』シリーズのプロデューサー、三谷一夫さん、その第1弾「36.8℃ サンジュウロクドハチブ」の安田真奈監督と、舞台となった兵庫県加古川市の制作担当だった松本裕一さん(兵庫県議会...