世界が注目する日本画家・四宮義俊。長編アニメーションデビュー作「花緑青が明ける日に」が公開!

新海誠や片渕須直監督の作品に参加し、CMやミュージックビデオなど、幅広いメディアで創作活動を行ってきた日本画家・四宮義俊。その彼のオリジナル脚本による長編アニメーション監督デビュー作「花緑青が明ける日に」が3月6日に公開となる。萩原利久と古川琴音が初めて声優に挑戦し、第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも正式出品され、世界が注目する青春アニメーション映画の魅力を紹介しよう。
幻の花火〈シュハリ〉をめぐって、主人公3人の青春が交錯する

舞台はさびれた海辺の町。ここで老舗の花火工場を営む帯刀煙火店は、町の再開発により立ち退きを迫られていた。経営者・帯刀榮太郎(声・岡部たかし)はすでに蒸発していて、実家の煙火店には息子の敬太郎(声・萩原利久)が一人残り、幻の花火〈シュハリ〉を完成させようと奮闘していた。立ち退きの強制代執行が行われる前日、市役所に勤める敬太郎の兄・チッチ(声・入野自由)が、東京で暮らす幼馴染のカオル(声・古川琴音)を連れて、家へ戻って来た。4年ぶりに再会した3人。それぞれの家と花火に対する想いが交錯する中、彼らは〈シュハリ〉を完成させて打ち上げる驚きの計画を立てる。
父に代わって幻の花火を打ち上げることに情熱を燃やす敬太郎。そんな弟の行動を市の職員として止めようとしながら、花火師を継ぐ決心がつかなかった自分に複雑な思いを抱くチッチ。榮太郎から〈シュハリ〉に関することを聞かされていて、敬太郎の熱意に同調していくカオル。三者三様の想いが、台風が直撃した強制代執行の日に、一つになっていく。
新たなアニメーションの表現に挑む、四宮監督の“攻め”の作家性に注目!

思い出の場所である実家の建物が壊される日に、自分たちの未来を懸けて幻の花火を打ち上げようとする3人の姿を、四宮監督はさまざまな手法を取り入れて描出している。再開発によって変わりつつある、さびれた港町の背景美術のリアルな描写には、画家としての表現力を感じるし、3人が酒盛りする場面で酔っ払ったチッチが、強制代執行に来る人々を食い止めるため、シミュレーション用に作った模型を観ていると、彼の眼にだけ模型や人形がストップモーションアニメとして動いて見える場面も印象的。またアングルも手前の植物や木の柱をナメて奥にいる人間を映し出す、実写映画で言えば望遠レンズを使った、奥行きのあるアングルが多く取り入れられていて、企画を始めてから10年ほどの歳月をかけたというだけあって、すべてのシーンに四宮監督の“攻め”の表現が感じられる。例えばカオルが夜釣りをしている榮太郎と話す回想シーンでは、二人の前に広がる海がほぼ黒色だけで描かれていて、その大胆な色遣いにも日本画家である監督独自のセンスが見て取れる。
四宮監督は、新海誠監督作品では「言の葉の庭」(2013)のポスターイラストや劇中の背景美術、「君の名は。」(2016)では回想シーンのパートの演出・原画・撮影を担当。片渕須直監督作品では「この世界の片隅に」(2016)の劇中に登場する水彩画を担当するなど、アニメーション映画にも深くかかわってきた。だからこそ、絵画や立体造形物を使ったストップアニメーションなども駆使し、通常のアニメーションの枠からはみ出た新たな表現を生み出そうとしているかのようだ。
声優初挑戦の萩原利久や古川琴音、岡部たかしがキャラクターを好演

また声優陣の好演も光る。〈シュハリ〉を完成させることに打ち込み、そのためならどんな行動に出るかわからない、感覚的に動く敬太郎の謎めいた雰囲気を、萩原利久が絶妙のバランスで演じているし、敬太郎やチッチ、そして蒸発した榮太郎のことも理解しながら、自分が何をすべきか模索するカオルを演じた古川琴音は彼女の心の揺れを、実写の青春ドラマのヒロインのように繊細に表現している。また3人に強い印象を残して蒸発する、榮太郎役の岡部たかしも、含んだ思いをにじませる大人の男性としてはまり役。
映画を彩る、imaseによる主題歌『青葉』も必聴!

主題歌を人気アーティストのimaseが歌っているが、その曲名は『青葉』。幻の花火完成のカギを握る、燃やすと青くなる緑色の顔料『花緑青』。その青さがにじみながら、新しい自分を迎えられるような曲を目指したという彼の歌が、作品の内容と見事に溶け合って感動へと誘う。この主題歌の編曲とサウンドプロデュース、更に劇伴を手掛けたのは、自らフィルハーモニーを組織して、国内外で音楽公演を行い、映画やテレビ、演劇、ダンス、ファッション、広告など、様々なメディアで音楽制作を行っている蓮沼執太。監督は勿論だが、多彩な才能を持つアーティストが結集し、鮮度の高いアニメーションがここに誕生した。「千と千尋の神隠し」(2001)、「すずめの戸締り」(2022)に続き、ベルリン国際映画祭コンペティション部門に正式出品された本作。日本からまた一人、世界を刺激する逸材がこの作品をきっかけに旅立とうとしている。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 制作部(山田)
「花緑青が明ける日に」
3月6日(金)より全国にて順次公開
2026年/日本/76分
原作・脚本・監督:四宮義俊
主題歌:imase『青葉』(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
キャラクターデザイン:うつした(南方研究所)、四宮義俊
作画監督:四宮義俊、浜口頌平
美術監督:四宮義俊、 馬島亮子
音楽:蓮沼執太
出演:萩原利久、古川琴音
入野自由、岡部たかし
配給:アスミック・エース
©2025 A NEW DAWN Film Partners
公式HP:https://hanaroku.asmik-ace.co.jp
