河井真也が語る岩井俊二。「Love Letter」ができるまで――【あの懐かしの映画を語ろう2】第1回前編

キネマ旬報のYouTube チャンネルで配信している〈あの懐かしの映画を語ろう〉の第2期がいよいよ始動する。第1期では「家族ゲーム」を皮切りに、「私をスキーに連れてって」「死んでもいい」、ロマンポルノなど、昭和から平成に移りゆく80年代から90年代にプロデューサーとして活動した山田耕大氏に、当時の製作秘話を大いに語っていただいたが、今回登場いただくのは、ホイチョイ3部作、「病院へ行こう」「Love Letter」「スワロウテイル」「リング」「ヤンヤン 夏の想い出」「Jam Film」など、ヒット作から単館系作品まで数多くの作品をプロデュースした河井真也氏。

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第1回は岩井俊二監督について。監督の初の劇場公開作「undo」、「Love Letter」そして「スワロウテイル」に至るまでを語った動画が、3月19日から配信された。今回はそのうちの前編、監督との出会い、「スワロウテイル」を作るために岩井俊二の才能を知らしめようと段階を踏んだ作品作り、そして八方塞がりの中、無理に無理を重ねて製作まで漕ぎつけた「Love Letter」について、河井氏が何を語ったのかをご紹介したい。

岩井監督の存在を河井氏が知ったのは1992年。岩井俊二が演出したフジテレビの深夜ドラマ『GHOST SOUP』とサザンオールスターズの『シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA 』のMVのふたつが同時期に河井氏のアンテナに掛かり、直接会うことに。(※ちなみに、『シュラバ★ラ★バンバ』のプロデュースをしていたのが後に「スワロウテイル」にも関わる小林武史氏)その場で3つの企画を持ち掛けてみるが、当時は映画作りにはあまり興味を示さなかったいう。代わりに岩井氏が出しきたのが「スワロウテイル」の“基”となるようなストーリー。今までにない世界観、テーマに大いに惹かれこれを実現させようと考えた河井氏だったが、製作費の問題が立ち塞がる。作品のスケール感から製作費は5億くらい掛かると見るが、いくらテレビドラマやMVでの実績があるとはいえ、まだ1本も映画を作っていない岩井氏とその企画に、当時在籍していたフジテレビからゴーサインが出るはずもない。そこで河井氏は「スワロウテイル」の製作のために、段階を踏んで周囲を納得させる実績を作っていこうと、岩井俊二との作品作りを始めたのだ。

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「undo」 ©1995 FUJI TELEVISION/PONY CANYON 「PiCNiC」 ©1996, 2012 FUJI TELEVISION/PONY CANYON

結果として、それが「undo」「PiCNiC」、そして「Love Letter」であり、それらの成功が「スワロウテイル」へ繋がっていく。その中で、無理に無理を重ねたのが「Love Letter」の製作。当初、テレビのゴールデンタイムで視聴率を取るために企画された本作は、編成部からは地味すぎる作品ということでNGが出されてしまい再考を余儀なくされる。そのため、河井氏が関わっていた映画館〈シネスイッチ銀座〉で公開する作品として内容をブラッシュアップ、製作費1億円規模で再スタート。しかし今度は主演に起用しようと考えていた中山美穂の事務所からNGが。ホイチョイ3部作のひとつで中山美穂主演の「波の数だけ抱きしめて」(91)で配収10億円超え(現在の興収換算だと20億円超)のヒットを飛ばし、プロデュースした河井氏がなぜ“単館系”の作品を、中山美穂を使って製作するのか!? という事務所からすれば当然の疑問。当時の中山美穂は出演した多くのドラマで高視聴率を叩き出し、『世界中の誰よりきっと』(92)、『ただ泣きたくなるの』(94)でミリオンセラーを出すなど、女優として、歌手としてまさにトップの存在だったのだ。

加えて、“困った時のポニーキャニオン”という最終手段も止められてしまった河井氏。フジテレビ、ポニーキャニオン、事務所からもNGを出され、完全に窮地に追い込まれてしまったが、ここで断念しては「スワロウテイル」への道が閉ざされてしまう…。すべては「スワロウテイル」のため、河井氏がこの窮地を逆転するべく繰り出した一手とは――ぜひ本編をご覧になっていただきたい。

さらに後編ではいよいよ「スワロウテイル」製作へ突き進む河井氏。ここではある人物の出会いによって、製作実現へ弾みがついていく話などが語られる。こちらも是非ご期待ください。

また、河井氏による【あの懐かしの映画を語ろう2】は今後、「スワロウテイル」、「リング」「らせん」、さらに1月に逝去した長谷川和彦監督について語っていただく予定だ。

「undo」
監督・脚本:岩井俊二
撮影:篠田昇
出演:山口智子、豊川悦司、田口トモロヲ
1994年/47分/配給:ヘラルド・エース

「PiCNiC」
監督・脚本・編集:岩井俊二
撮影:篠田昇
出演:Chara、浅野忠信、橋爪浩一、鈴木慶一、伊藤かずえ、六平直政
1994年/68分/エース ピクチャーズ=日本ヘラルド映画

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Blu-ray ¥6,380(税込) DVD ¥4,180(税込) FODほか動画配信中 発売元 フジテレビジョン 販売元 キングレコード
©フジテレビジョン

「Love Letter」
監督・脚本・編集:岩井俊二
撮影:篠田昇
美術:細石照美
音楽:REMEDIOS
1995年/117分/配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画

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