遂にクランクアップした「スワロウテイル」。しかしさらなる苦難が待っていた!〈あの懐かしの映画を語ろう2〉第2回後編

キネマ旬報YouTubeチャンネル〈あの懐かしの映画を語ろう2〉の第2回の後編が4月17日(金)より配信が開始。フジテレビなどでヒット作から単館系まで数多くの作品を手掛けた河井真也氏に、様々なトラブルを経て撮了した「スワロウテイル」が、上映に至るまでにさらなる困難に見舞われたことを語っていただいた。

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©1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE

10年以上所属していたフジテレビの映画部から、懲罰的な人事により編成部へ異動、さらにポニーキャニオンへ出向してまで河井氏が製作をしたかった「スワロウテイル」。悲願とも言うべきその製作は、数千万円の費用と時間をかけながら一向に決まらないロケハンや、山口智子のスケジュール(あの“ロンバケ”の撮影が控えていた)の縛りによる、絶対に遅らせることができない撮影初日など、始めから難航する。そしていざ撮影が始まるや、今度はいつまで経っても終わらない撮影に河井氏の苦悩は募ってゆく。居ても立っても居られずに現場に駆けつけてみれば、「GW中に何があっても終わらせるように」という河井氏の指示もむなしく、嬉々として撮影を続けるスタッフたちがいた――。プロデューサーと、監督をはじめとする現場スタッフたちとの作品に対する向き合い方の違いが語られた前編だったが、後編はポストプロダクションから話が始まる。
前編はこちら

「僕はもう散々大変な目に遇ってきたけど、もっと大変なことがあったんですよ」と言う河井氏。岩井俊二監督とカメラマンの篠田昇氏が、自分たちの目指す映像のためにはフォトケム(FOTOKEM=映画フィルムの現像や関連サービスを提供するハリウッドの大手総合プロダクション)でなければ実現できないと、ロスへ行ってしまったという。それまでイマジカで何度もテストを行っていたので、当然ポスプロ作業から上映用フィルムのプリントまでイマジカでやるだろうと、河井氏もイマジカも考えていたにも関わらず…である。監督たちの注文に何とか応えようとしていたイマジカに対しての申し訳なさは勿論、ネガを海外に持ち出してしまう怖さもあったというが、監督の熱意に押され了承することに。結果、プリントまですべてロスで行い『メイド・イン・USAですよね』と笑う。

さらに、完成披露試写会の当日の朝になっても監督はまだ日本に帰ってなく、プリントと共に空港の検査を強行突破して何とか直前に到着する。しかしギリギリで会場入りした監督の第一声は『河井さん、プリントをカットする部屋はないですか⁉』。すでに多くの関係者、観客が集まりあと1時間ほどで上映を始めないといけない中、気に入らないシーンのカットを始めたという。

監督の強烈なこだわりは映像だけに留まらない。劇中で重要な役割を果たす「マイ・ウェイ」について、どうしてもフランク・シナトラの原曲を使いたいとリクエストしてくる。原曲の使用料が2000万円以上するというのも驚きだが、音楽の予算を考えると完全に無理な話で、烏龍舎の代表として製作者側に立つ小林武史氏も河井氏と同意見だったという。しかし、クリエーターでもある小林氏は最終的に監督の考えに賛同してしまい、小林氏がさらに出すことで決着。結果、膨れ上がった音楽の制作費だったが、サントラが大ヒットして余りあるリターンがあったという――。

また、劇中でChara演じるグリコをボーカルに結成されたバンド[Yen Town Band] が、これまでの常識を覆すような大ヒットを飛ばすまでの小林氏の“予言”めいた確信や、岩井監督との作品作りについてなど、まだまだ話は盛りだくさん。ぜひ本編をご覧になってお楽しみいただきたい。

次回はJホラーブームの先駆け「リング」「らせん」について。河井氏がポニーキャニオンに出向になったことがきっかけという、運命的な出会いから作品作りが動き出します。配信は4月下旬を予定。こちらもご期待ください。

「スワロウテイル」

監督・脚本・原作・編集:岩井俊二
プロデュース:河井真也
撮影:篠田昇
美術:種田陽平
音楽:小林武史
出演:三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介、アンディ・ホイ、渡部篤郎、桃井かおり、山口智子 ほか
1996年/149分/配給:日本ヘラルド映画=エース・ピクチャーズ

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