夢を叶えるってそんなに大事なの?──「見上げてごらん」〈あなたに観てほしい、日本映画がある 第14回〉

キネマ旬報YouTubeチャンネルにて配信している〈あなたに観てほしい、日本映画がある〉。現在公開中の日本映画の中から、特にオススメしたい作品を厳選し、その魅力を紐解いていくレビュー動画の第14回。今回取り上げる作品は、森田剛がマンガ家の万年アシスタントを演じ、森本晶一と佐藤快磨が共同で監督を務めた「見上げてごらん」。

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巨匠マンガ家・吉住はるを(武田鉄矢)のもとで、長年アシスタントを続けてきた42歳の土屋輝一(森田剛)。ツッチーと呼ばれる彼は、人気声優の妻・莉花(松本まりか)と別居し、中学生の娘・ひかり(早瀬憩)と暮らしている。吉住の17年にわたる連載が終了を迎えるなか、編集者の潮田ユキ(森川葵)や、40歳の新人アシスタント・山田ぽてと(川上友里)との関わりを通して、土屋の日常にも変化が訪れる――。

本作をレビューする元にっかつプロデューサー、脚本家の山田耕大氏は、冒頭でこう語る。

「居心地のいい映画だった。映画を観て、居心地のいいなどという感想は的外れな気もするが、『見上げてごらん』は居心地のいいと言いたくなる映画だった」

山田氏がまず注目するのは、主演の森田剛だ。森田といえば、山田氏の記憶に強く刻まれているのが、𠮷田惠輔監督の「ヒメアノ~ル」。心の底に哀切を秘めた殺人鬼の狂気に、凄まじい衝撃を受けたという。その森田が今回は、なかなか芽の出ない、冴えない中年のアシスタントを演じている。

マンガ家としてデビューしたいという思いを抱えながら、25歳のときから同じ仕事場で働き続けてきた土屋。娘の卒業式では、有名人である妻がほかの父母から記念写真を求められ、自分はその写真を撮る側に回る。そんな日常の一場面にも、売れない彼の立場がにじむ。

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一方、土屋たちと関わる編集者・潮田ユキは、仕事の傍らチアダンス教室に通う29歳の女性。演じる森川葵について山田氏は、「おんなのこきらい」「チョコリエッタ」などの主演作を振り返りながら、さまざまな役を絶妙に演じてきた俳優だと評する。

そして山田氏の関心は、本作を手掛けた二人の監督にも向けられる。原案・脚本も担当する森本晶一は、是枝裕和監督作品などで助監督を務めてきた。一方の佐藤快磨は、自主映画からキャリアを重ねてきた監督。山田氏は、太賀が主演した短編「壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ」、さらに仲野太賀主演の長編「泣く子はいねぇが」にも触れ、その歩みをたどる。

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「泣く子はいねぇが」では森本が助監督を務めていたことから、山田氏は二人の縁にも思いを巡らせる。さらに、コーエン兄弟やファレリー兄弟、ウォシャウスキー姉妹など、映画史に名を残す共同監督の組み合わせへと話題が広がっていく。

二人の監督はどう作業を分担するのか。どちらが主導権を握るのか。興味は尽きないが、山田氏はこう続ける。

「我々は出来た映画をただ見て楽しんでいればいい」

その言葉の先に見えてくるのが、映画の中の人々への親しみだ。吉住が最終回の結末を変えると言い出し、締め切りを前にアシスタントたちが描き直しに向き合う。新たに加わったぽてとは、アシスタントの仕事こそ初めてだが、SNSにラーメン漫画を投稿している。年齢も立場も異なる人々が、それぞれの思いを抱えてマンガづくりに携わっているのだ。

好きな仕事をしていると言う潮田に、土屋は苛立ちをぶつける。自分のマンガを描くよう勧める妻にも、素直には応じられない。下積みを経験してきた映画人として、山田氏が身につまされると語るのが、そんな土屋の言葉である。

「アシスタントじゃダメなの? 夢を叶えるってそんなに大事なの?」

夢を追い続けることと、誰かを支える仕事を続けること。その間で揺れる土屋の思いは、マンガや映画の世界だけに限らないだろう。人の成功を喜べなかったり、何気ないひと言に傷ついたりする姿にも、山田氏は自分たちと地続きの人間を見いだしている。

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森田剛の演技から二人の監督のキャリア、さらに坂本九の歌と映画の題名が呼び起こす連想まで。さまざまな話題を行き来しながら、山田氏が最後にたどり着くのは、冒頭と同じ感想だ。

「居心地のいい、心癒される映画だ。夜空を見上げたくなった」

夢が思うような形にならなくても、日々は続いていく。そんな人々の姿を描いた「見上げてごらん」の味わいを、山田耕大氏のレビューとともに、ぜひ動画でお楽しみいただきたい。

[レビュー動画をここに挿入]

※本番組は東芝の「音声合成技術 ToSpeak™」により生成された音声で読み上げられ、音声コンテンツとしても楽しむことができる構成となっている。

「見上げてごらん」

監督:森本晶一、佐藤快磨
原案・脚本:森本晶一
音楽:池永正二
出演:森田剛、森川葵、川上友里、阿部寛、松本まりか、武田鉄矢、早瀬憩
配給:ギャガ
©2026「見上げてごらん」製作委員会

10月30日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開中
公式サイト:https://gaga.ne.jp/miagetegoran/

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