映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 —「私たちの話し方」

手話との出会いから広がる新しい世界

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近年、「コーダ あいのうた」(21)や「ぼくが生きてる、ふたつの世界」(24)といった作品が注目されたこともあってか、映画のなかで手話を使う人たちの姿を見る機会が増えたように感じる。しかし、「聴覚障害者」と呼ばれる人たち全員が日常的に手話を使っているわけではない。それぞれに聞こえの度合いは異なり、補聴器や人工内耳を使用しながら(相手の口の動きを読み、声で自分の意思を伝える)口話や筆談でコミュニケーションをとる人もいる。自身をどう呼ぶかもアイデンティティの持ち方によって異なり、一般的に聞こえない人を指すことが多い「ろう者」という言葉を「日本手話という、日本語とは異なる言語を話す言語的少数者」と定義する人もいる。

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「私たちの話し方」の主人公は、母親の意向に従って幼い頃から手話を使わず、人工内耳を装着して「聞こえる人」になることを目標としてきたソフィー。どこか無理をしながら生きてきた彼女が、同世代の友人たちと語らいを重ねることで「聞こえない」人たちのなかにあるグラデーションに気付き、自分自身のアイデンティティを見つけていく。

監督のアダム・ウォンは、ろう者がダイビング中に手話を使って会話ができることに驚きを覚え、彼ら彼女らの文化を調べ始めたという。ダイビングインストラクターを目指すジーソンが友人たちと海中にいるシーンから、監督が最初に感じた感情が伝わってくる。映画のなかには、映像に続いてその意味を表す手話が登場したり、さまざまな「聞こえなさ」を「聞こえる」観客に想像させるために音響設計を行ったりといった工夫が凝らされている。手話を初めて見る人でも、いつの間にか香港手話の「ありがとう」と「ごめんなさい」を覚え、ソフィーたちに話しかけたくなってしまうはずだ。

文=佐藤結 制作=キネマ旬報社・山田 (『キネマ旬報』2026年4月号より転載)

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私たちの話し方

【あらすじ】
幼い頃に人工内耳手術を受け、聴者のように成長してきたソフィー。就職の時期を迎え、不安を抱えてきた彼女は、自分と同じく人工内耳のアンバサダーを務めながら手話も理解するアランと知り合う。さらに、彼の幼なじみで手話を第一言語とするジーソンとの出会いによって手話への興味が増したソフィーは彼らと共に過ごしながら手話を覚えていく。

【STAFF & CAST】
監督:アダム・ウォン
出演:ネオ・ヤウ、ジョン・シュッイン、マルコ・ン
配給:ミモザフィルムズ
2024年/香港(広東語・香港手話)/132分/Gマーク
3月27日(金)より全国公開
© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation.
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