湊かなえ×瀬々敬久監督が念願の初タッグ、原作者も絶賛! 罪と希望のミステリー映画「未来」

“イヤミス”の女王と称され、読後に深い思考の余韻を残す作品を生み出してきた湊かなえ。『告白』や『落日』など、その作品は数多く映像化されてきた。デビュー10周年に発表した渾身の傑作ミステリー『未来』を、「ラーゲリより愛を込めて」(22)などの瀬々敬久監督が映画化。原作者の湊も「いち鑑賞者として感動し、泣きました」と称賛を惜しまない映画「未来」が、10月21日(水)にBlu-ray&DVDとして発売(DVDレンタル同時リリース)される。
“未来”を描けずにいた人々が見つけた、一筋の光

物語は、つらい現実に押しつぶされそうな10歳の章子のもとへ、20年後の自分から「悲しみの先には、光ある未来が待っている」という不可思議な手紙が届くことから始まる。奈良県桜井市、東京、三重県鳥羽市を舞台に、異なる時間軸と複数の人物の視点を行き来しながら物語は進み、やがて章子をめぐる人々の過去と、手紙に隠された秘密が明らかになっていく——。
複雑な家庭環境で育ちながらも祖母に支えられ、苦学の末、教師になる夢を叶えた篠宮真唯子(黒島結菜)。その教え子である佐伯章子(山﨑七海)は、最愛の父・良太(松坂桃李)を亡くした悲しみをこらえながら、心を閉ざした母・文乃(北川景子)を支えようとしていた。そんな章子を見かねた真唯子は手を差し伸べるが、それを快く思わない生徒から攻撃を受け、退職へと追い込まれてしまう。
大好きな先生までいなくなったある日、章子のもとに一通の手紙が届く。差出人は「20年後のわたし」。そこには未来から送られてきたことを示す証拠まで同封されていた。半信半疑ながらも、章子は事あるごとに未来の自分へ返事を書くようになる。母の事実婚の相手である早坂誠司(玉置玲央)から受ける暴力、同級生からの執拗ないじめ。逃げ場のない日々の中、手紙を心のよりどころに、章子は懸命に生きてきた。
ところが、母をぞんざいに扱う早坂のある仕打ちを目の当たりにして、章子の中で何かが壊れてしまう。同じように父親から暴力を振るわれる親友・須山亜里沙(野澤しおり)と結託し、「親を殺す」ことを計画する——。
手紙の送り主の謎だけでなく、映画の構造自体も謎解きに

複数の人物の視点を通して描かれる原作を、映画では、奈良県桜井市、東京、三重県鳥羽市という3つの町を舞台に、章子、真唯子、文乃らの人生が交わる物語へと再構成している。年代順には進まず、時間軸と人物の視点を複雑に交錯させながら、それぞれの人生を並行して描いていく。そのため観客は、手紙の送り主は誰なのかという大きな謎だけでなく、「なぜこの出来事がここで描かれるのか?」「この人物とあの人物のつながりは?」と、映画の構造そのものを読み解きながら物語を追うことになる。
ちりばめられた謎が一つひとつ明かされるにつれ、別々に見えていた3つの物語が、ひとつにつながっていく。ある人物の身に起きた出来事が、時間や空間を超えて別の人物の人生にまで影響を及ぼしていることに気づかされるのだ。
そこから浮かび上がるのは、心の傷や暴力が次世代へと連鎖してしまうことの痛ましさ。ひとつの悲劇が新たな悲惨な状況を生み出し、その痛みは母から子へと受け継がれていく。謎が解き明かされるにつれ、彼女たちの苦しみだけでなく、その背後に横たわる社会の問題まで浮き彫りになる。
そんな負の連鎖を断ち切ろうと声をあげるのが、子どもたちだ。彼女たちが真っ直ぐに前を向いて叫ぶラストシーンは、傍観者であった観客に突如として迫ってくる。その声に気づき、手を差し伸べられる大人になっているのか——と。
出演者はみなハマり役! 実力派俳優たちが作品の世界を支える

一筋縄ではいかないキャラクターを演じるのは、黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、松坂桃李、北川景子ら、実力派俳優たち。複雑な過去を抱えながら子どもたちに寄り添う教師・真唯子を演じるのは黒島結菜。章子には、『渇水』(23)で注目された山﨑七海。章子の心優しい父親には松坂桃李、衝撃的な秘密を抱え、世の中と距離を置く母親・文乃には北川景子。さらに、坂東龍汰、細田佳央太らが、それぞれに葛藤を抱える人物を演じ、物語に厚みを加えている。
Blu-rayに収録される映像特典のメイキングでは、俳優たちが撮影現場でのエピソードや役との向き合い方、作品への思いを語っており、見応え十分。なかでも山﨑が、「こんなにどん底にいる子を助けてあげられないことや、助けてもらえないこの環境が、世の中にあると考えた時に、何もできない自分が辛かった」と涙ぐみながら言葉を紡ぐ姿が印象に残る。
山﨑のほか、亜里沙役の野澤しおり、真珠役の近藤華ら、子ども役の若手俳優の演技が光る。そんな彼女たちをそばで見ていた黒島は、「10代で私も瀬々さんの作品に入ったことを思い出したり、あの時の自分と重ねてみたり」したそうで、「きっとこれからどんどん現場で経験を積んで、素敵な女優さんになっていくんだろう」と期待を寄せていた。彼女たちがこれからどんな俳優へと成長していくのか——。そんな未来まで期待させてくれる映像特典だ。
自分の世界の地続きに、この物語があることを忘れないために

原作者の湊が舞台挨拶で「映画を見てくださったみなさんは、つらいエピソードがたくさんあって、自分の中で受け止められるものと、受け止めきれないものがあると思いますが、これはお話の中の物語ではなくて、全て実在することを物語として再構成したエピソードです」と語っていたが、その言葉に改めて映画が描く現実の重さを突き付けられる。この物語が自分の生きる世界と地続きにあることを実感し、子どもたちが未来に希望を持てる社会を作るためには、自分もまた無関係ではいられない。
湊は「今日の気持ちを持って帰ってもらって、日常生活の中で思い出してもらいたい」とも話していた。鑑賞後に感じたことを忘れないためにも、Blu-rayやDVDを手元に置き、折に触れて見直したい作品だ。子どもたちが未来に希望を持てる社会であるために、自分には何ができるのか。映画が投げかけた問いを、決して忘れてはいけない。
文=小竹 亜紀 制作=キネマ旬報社・制作部(山田)

「未来」
●10月21日(水)Blu-ray&DVD発売(レンタルDVD同時リリース)
▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●Blu-ray 価格: 6,600円(税込)
【ディスク】<1枚>※本編+特典映像
★特典映像★
・メイキング
・舞台挨拶集
●DVD 価格:4,290円(税込)
【ディスク】<1枚>※本編のみ
●2026年/日本/ 130分
●原作:湊かなえ『未来』(双葉文庫)
●監督:瀬々敬久
●脚本:加藤良太
●キャスト:
黒島結菜
山﨑七海 坂東龍汰 細田佳央太 近藤華
玉置玲央 野澤しおり 吹越満
松坂桃李 北川景子
●発売・販売元:VAP
Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社
