映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 —「今日からぼくが村の映画館」

ペルーの山間の村に暮らす少年と映画の出合い

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アンデス山脈やアマゾンの熱帯雨林、インカ帝国の遺跡・マチュピチュで知られるペルーは、日本の約3・4倍の国土に約3435万人の人々が暮らす国だ。「今日からぼくが村の映画館」では、山間の村に住む少年と映画との出合いを軸に、先住民たちの暮らしが描かれる。

シストゥの家は農業で暮らしを立てており、父親は一刻も早く彼にも一人前の働き手となってほしいと考えている。一方、母親は彼が学校に通ってスペイン語を学び、より広い世界に飛び出していってほしいと願う。そんな母の思いに応えるように、シストゥは「映画」を知ることによって「外の世界」への好奇心を育む。役柄同様、今作の公開まで映画館に行ったことがなかったというビクトル・アクリオの輝くような笑顔が、映画が与えてくれる喜びを伝える。彼の興奮は子どもたちや村人たちの心も動かし、ついには村中で映画見物に出かけることになるが、スペイン語を解さない大人たちは内容を理解できずに落胆する。

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映画から離れた大人たちの心を繋ぎ止めるのはシストゥの「語り」だ。ママ・シモナの提案でひとり映画館に通うことになったシストゥは、見てきた映画の内容を自分たちの言葉であるケチュア語で語る。美しい山並みを背にして全身で表現する彼の姿を見ながら、大人たちはようやく「映画」と出合う。ドキュメンタリーから出発し、常にアンデス世界と結びついた作品を作ってきたというセサル・ガリンド監督は、純粋な喜びに導かれて成長する少年の姿を追いながら、マイノリティである先住民の立場をさりげなく見せる。

映画を知らないシストゥに学校の教師は「物語を伝えるために発明されたもの」と話す。そして、ガリンド監督はこの映画でペルーに暮らす人々の物語を届ける。

文=佐藤結 制作=キネマ旬報社・山田 (『キネマ旬報』2026年5月号より転載)

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「今日からぼくが村の映画館」

【あらすじ】
アンデス山脈に囲まれた村に家族と住む少年シストゥ。ある日、風が運んできた新聞の広告を見て「映画」の存在を知る。なんとか自分の目で確かめたいと父について町に出かけたシストゥは移動映画館を見つけ、暗闇のなかで動くヒーローに魅了される。その体験を学校で語った彼は、友人と村の長老ママ・シモナと共に、再び町へと向かう。

【STAFF & CAST】
監督:セサル・ガリンド
出演:ビクトル・アクリオ、エルメリンダ・ルハン、メリーサ・アルバレス、アルデル・ヤウリカサ ほか
配給:ブエナワイカ

2022年/ペルー、ボリビア/88分/Gマーク
4月17日(金)より全国公開
©Casablanca Cine 2019

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